入居者から賃料の減額請求を受けた。賃料の「増減請求権」とは何か?

賃料の増減請求権




Aさんは自分が所有しているアパートに入居中(賃貸借契約期間中)のB氏から家賃を減額するよう請求されました

B氏が同じ地域において、築年数、間取り、建物の構造、その他の条件が似通った物件の最近の家賃を複数調べたところ、B氏がAさんに支払っている家賃より低額であるからという理由です。

Aさんも地域の似通った物件を調べましたが、設備面や管理面等からAさんの物件の現状の家賃は相当であると判断し、それをB氏に主張しました。

しかしながらB氏には受け入られず平行線を辿るどころか、B氏は訴訟にまで発展させる構えです。

そもそも賃貸借契約期間中に家賃を下げろなんて非常識だとAさんは考えますが、B氏の主張通り減額せざるを得ないものでしょうか?



賃料の増減請求権は賃貸人にも賃借人にもあるということ

 

賃貸借契約は更新を重ねるなどによって長期におよぶケースも多いものです。

はじめて入居する際に賃料を決めたとしても、いわば5年ひと昔。

月日の経過とともに世の中の物価や建物の築年数、その地域の開発などの発展度合いなど様々な要素から、当初設定した賃料が不相当となることがあります。

賃貸人は、「現在なら家賃はもう少し高くても良いはず」と思うこともあるでしょうし、入居者すなわち賃借人は「他より高い家賃だ」と感じるようなケースもあるでしょう。

両方が起こり得ます。

そうしたとき、賃貸人、賃借人とも契約の条件にかかわらず、将来に向かって賃料の増減を請求することができる権利があるのです。

「増額しない旨の特約」は有効だが、「減額請求しない特約」は無効

 

賃貸借契約において、一定期間賃料を増額しない旨の特約がある場合は、その期間中に賃貸人から賃借人に対して増額請求することは認められていません。

一方で、契約上に「減額請求しない旨の特約」がある場合でも、賃借人から賃貸人に対しては減額請求できるのです。

賃借人の権利を保護しているということです。

さて、この賃料の増減。

その請求権があるからといって、すなわちその請求が通る、スムーズに増減が成立できるかといえばそうではありません。

賃貸経営、生活の生計、両者ともその立場に立てばかなり重要な問題です。

よって協議におよんでもすんなり決着がつくとは限らないのです。

賃料の減額を受け入れない賃貸人Aさんと、減額しないことを不当とする入居者のB氏。

両者の協議は不調に終わり、決着はついに裁判の場に持ち越されます。

さてその間毎月の家賃に関してはどうするべきでしょうか?

AさんB氏に対して相当と認める賃料を請求できる

 

賃料の減額について当事者間の話し合いで決着できなければ、裁判所にその判断を委ねることになります

その際、裁判において「減額が正当」との判断が下されるまでは、賃貸人は「相当と認める」賃料を入居者(賃借人)に対して請求することができます

つまり、減額幅ゼロが相当だと思えば従来の賃料を、多少の減額幅を認めた賃料が相当だと考えるのであれば、その金額を請求することが可能ということです。

裁判で確定した金額と差額があれば、利息をつけて返還

 

そして結果的に裁判において確定した金額が、賃貸人が請求し受領していた賃料よりも、減額が認められた金額である場合、受領していた金額と確定した金額の差額を返還することになります。

ただし差額に対して年率1割の利息を付けることとされます。

減額は「減額請求」の時点からということ

 

つまり、この利息を付けた返還精算は、裁判において賃料の減額請求に関しある一定の減額が正当とされた場合、その減額が適用されるのは、「裁判が確定」時点からではなく、年月を遡り賃借人が「減額請求をした」時点からということを意味しています

賃貸人から賃料の「増額請求」を行った場合も同じ

 

ちなみに逆に賃貸人が入居者(賃借人)に対して賃料の「増額請求」を行い、協議が不調に終わり裁判となった場合も同様です。

この場合、裁判で確定するまで、賃借人は「相当と認められる」額の賃料を賃貸人に対して支払えば良いとされています。

そしてもし裁判で一定の増額した賃料が確定し、その金額と賃借人が支払った賃料との間に差額、つまり不足額が生じた場合は、賃貸人は賃借人からその不足額に年1割の利息を付けて支払ってもらうことになります。

この場合も「裁判で確定した」時点からではなく、「増額請求した」時点からということです。