持ち家に住み続けながら生活保護も受けたい、という心理が狙われる!

高齢者の持ち家




一見、自分の土地建物、マンションなど不動産を所有していれば、それなりに豊かな生活を送っているように思われる傾向にありますが、実情はそうではないケースがあります。

あくまでも暮らしの拠点としての不動産は所有しているが、生活費には困窮している状態つまるところ現金がないというケースです。

就労できず、また切り崩す貯蓄もないか底を尽きつつあるという高齢者がそうです。

中には時代的にも年金未加入者もいます。

そうなると収入は限りなくゼロ。

現役時代に購入した土地建物だけはありますが、これを売却して現金を得たとしても、高齢者ゆえに賃貸住宅に入居できるか不安。

そして何よりも住み慣れたマイホームを高齢で手放し、見知らぬ土地の賃貸住宅で1から生活を始めるという気持ちには到底なれない、といった心情が強い。

昨今そのような高齢者に甘い言葉で不動産売却を勧誘する悪徳業者がいるので注意が必要です。



持ち家と生活保護の壁という盲点をつく悪徳業者

 

不動産を所有していても現金のない高齢者の特質的な問題の一つに、生活保護を受給しにくいということがあります

いわゆる持ち家がある場合、条件により可否は分かれるともいえますが、一般的に実情として生活保護は受けられないといえます。

地方僻地の土地建物ならばともかくとして都市部の土地建物は現金化可能とみなされるからです。

それを現金化しないのは所有者の勝手。

現金化できる資産があるにも関わらずその資産を現金化せず、手元に現金がないとしているのは本人の都合。

これを生活保護受給対象者とするわけにはいかないというのが一般的な自治体の判断ではないでしょうか。

対象者とするとしてもあくまでも持ち家の売却が前提

売却して現金が得られるまでのつなぎとしての生活保護となる場合が多いようです

さて、そんな持ち家を所有する高齢者の実情に目をつけた悪徳業者。

彼らは言葉巧みに高齢者に近寄ります。

持ち家に住み続けられ、生活保護も土地建物の売却代金も毎月貰えるという嬉しい仕組み?

 

平成27年1月、東京地方裁判所においてある土地建物の売買契約を無効とする判決が下されました。

売買契約は87歳の高齢者Aさんが所有し居住している土地建物に関する契約で、Aさんと売却の勧誘をした不動産業者B社との間で締結されたものです。

Aさんは一人暮らし。

生活費に困窮していました。

また認知症の症状もみられました。

そこにB社が現れ、Aさんが住んでいる土地建物をこんな条件でB社自身に対して売却することを勧誘しました。

売却してもAさんは、住み慣れたその家に死ぬまで住み続けられるということ

売却代金は分割で毎月10万円ずつ支払うということ

また持ち家を売却することで生活保護費なども受領でき

1か月で諸々合わせて20万円ほどの収入が得られるという内容です。

そして平成25年2月、AさんはB社と住んでいた持ち家の売買契約を交わします。

ところが、その後B社からの毎月10万円の支払いはありません。

平成25年2月から5月の毎月の支払いは3万円または5万円です。

それどころか、売買契約の2か月後にはB社と代表者が同じであるC社に所有権移転登記、さらにD社へと転売されています。

また売買契約においてはAさんが土地建物を引き渡す時期は平成34年2月となっているにも関わらず、一方で平成25年8月までにAさんを退去させた上でD社にこの土地建物を引き渡す合意書が交わされてもいました

つまり、B社はAさんに対して「ずっと住み続けられる」として約束していたとしても、転売先のD社は善意の第三者となり、そんな約束に捕らわれることなくAさんを退去させて土地建物を売却し利益を生むことができる。そんなカラクリをつくっていたといえます。

また売買代金も総額は契約書に記載がなく毎月3万円ずつ119回に分けて支払うというもので、固定資産税評価額約1188万円から鑑みても、都内23区内にある土地建物の売買価格としても著しく低廉なものでした。

このような経緯、状況から東京地方裁判所は、高齢であり判断能力の低下したAさんに対して不確実な見通しに基づいた説明および詐欺的な言辞を用いて売買契約を成立させたと認められるとし、この売買契約を公序良俗に反するものとして無効としたのです。

マイホームに住み続けたいという心理

 

この件を例とするように、昨今、持ち家あり、しかし現金がない高齢者、という層は悪質な業者の一つのターゲットとなっています。

巧妙な手口を仕掛けるのではなく、いわゆる闇金の餌食となってしまうケースも見受けられます。

いずれにしても、これらはターゲットとなる高齢者の「マイホームに住み続けたい」という心理に付け込まれているケースといえます。

高齢者本人の判断だけではなく、子供等の親族がケアしていても、親の意向を重視したばかりに所有不動産を適正な評価に基づかなく所有権を手放してしまうケースも散見されます。

これは相手がいわゆる悪徳業者ではなかったとしてでもです。

「マイホームに住み続けたい」という心理は本当によく分かります。

何十年と住み続けた家にはお金に代えられないものもいっぱい詰まっています。

それを高齢になって手放すのは、何か生きてきた証を失うような想いになるということもあるでしょう。

また高齢ゆえに大掛かりな引越しに体力気力が耐え得るかという懸念から躊躇してしまう場合もあるでしょう。

それでもある一定の状況になったら、冷静に考え適正にマイホームを処分することで生活を立て直すことを検討する姿勢が必要といえます。

もし親御さんの問題として向き合う子供の立場であったとしても、そう親御さんにアドバイスできる強さが必要だと思います。