戸建ての中古住宅の価格査定方法が変わりつつある件




今までというか、今現在も戸建ての中古住宅の価格査定というのは無慈悲なものです。

木造住宅でいえば、築20~25年で価値はほぼゼロという扱いになります。

それどころか、価値ゼロの建物は壊さなければならない、壊すには費用が掛かる、ということで、その建物の立っている土地代からその分の値引きを強いられる要素として扱われる始末です。

ところが、昨今少しずつですが、「これはオカシイ!!」という声が聞かれるようになり、その流れが大きくなりつつあります。

戸建ての中古住宅の価格査定はどのような方向に向かおうとしているのでしょうか?



そもそも木造住宅は築20年~25年で何故価値がゼロになるのか?

 

戸建ての中古住宅の価格査定の根拠としているのは、一般的には減価償却資産の耐用年数当に関する省令に定められた木造住宅の耐用年数(22年)という基準です。

これに照らし合わせ減価を決めていくと、ざっと20年、大目にみても25年で価値がゼロになるという計算です。

でも、この減価償却資産の耐用年数とは、本来は企業会計上の償却の期間として適切な年数を示したものなわけです。

これがいつの間にか、住宅の価値が維持される期間とみなされるようになりました。

実はこれ、「慣習」に過ぎないんです。

そうです。あくまでも慣習で、こう査定しなければならないというわけではないのです。

ではなぜ、この方法が慣習になったのでしょうか?

はっきりとしたことは分かりません。

ただ、戦後間もないころの住宅というのは、一般的に性能が良くないものが多くありました。

また、高度成長期へと突入していくという時代の流れの中で、比較的、短期間で立て替えられることが多く、それがなんとなく築後「20年」程度が目安とされるようになりました。

急成長を遂げようとする住宅メーカーも「家は20年経ったら立て替えるべき」という営業攻勢を掛けたのも一つの要因であったかもしれません。

このようなことを背景に、住宅市場では建物の価値が20年程度でゼロになるという共通認識が形成されてしまったという考え方があります。

そしてこの考え方のもっともらしい根拠として引っ張り出されたのが減価償却資産の耐用年数だったのでしょう。

減価償却資産の耐用年数を超えると価値がゼロになる不思議

 

ところで、減価償却の耐用年数でいうと、自動車というのは概ね4~5年程度です。

ですが、自動車の中古市場で、4~5年落ちの中古車が耐用年数を超えたからといって価値ゼロとなることはありません

では何に基づいて価値を評価、査定されているかというと、車種や人気度、走行距離、事故歴などその評価項目は多岐に渡ると思いますが、ひとことで言えば、

「その車の人気度」

「その車、あとどれくらい使えるの?」

この2点で市場価値が決まってくるのだと思います。

少なくとも減価償却の耐用年数を超えたかどうかはほとんど問題になりません。

もし自動車を買う際にそれを問題にする買い手がいるとするならば、それは儲かっている会社の経営者。

彼らからすれば、耐用年数を超えた車は一発で経費で落とせるからという理由で、4年以上落ちの高級車の方が都合が良い場合もあるわけです。

それが戸建ての中古住宅となると、木造の場合、20年から25年で価値ゼロになってしまう。

理由は「耐用年数を超えているから」。

まだ使えても価格査定ではゼロ

これは不思議だし、理不尽でしょう、ということになるわけです。

戸建ての中古住宅を「どれくらい使えるか?」で価格査定することの壁

 

よし、ではその理不尽さを解消しよう。

自動車と同じく「どれくらい使えるの?」を基準に評価、価格査定するべし、ということになります。

ところが、これがそう簡単ではないという戸建ての中古住宅特有の問題があるのです。

建物は沢山の部位によって出来ています。

大まかにいえば、一番の根本を成す部位が、「基礎」と「躯体」

これが建物の肝心かなめ。

そして屋根があり、天井があり、壁があり、床があり、ドアなどの建具があり、お風呂やキッチン、トイレ等の設備があり・・・。

そうした様々な部位から成り立っていますが、これらの部位についてその劣化状態を目視でチェック、評価できるものもあれば、出来ない、あるいは目視でチェックできるとしてもかなりの手間が掛かる部位もあるというところが大きな問題です。

例えば、床のフローリング材が傷んでいる、壁紙が破れているというのは外観上、一目見れば分かります。

ですが、屋根の状態がどうなっているかは、屋根に登ってみないと分かりません。

そこで手間を掛け屋根に登ります。

仮に雨漏りを発生させる恐れのある劣化箇所を発見したとします。

その場合、屋根を張りなおせば済むこと、という評価で良いような気がしますが、そうではないのです。

屋根が劣化しているということは、室内に雨漏りがなくても既に住宅内部に雨滴が侵入している恐れがあります。

その雨滴が肝心かなめの「躯体」を腐食させている可能性も疑われるというわけです。

しかし、ではその躯体が腐食しているかどうかは外観上からは目視で確認できない

これが問題なのです。

製造年月日がいつ、走行距離がウン万キロならば、そのの劣化状態はこんな感じ、と評価可能な自動車とは異なり、

住宅は同じ築年数であっても、その建っている環境、住人の住まい方、メンテナンスの仕方により著しく劣化状態が異なり、しかもその劣化状態を外観上確認しにくい

この点が、特に木造の戸建ての中古住宅の住宅本来の機能での評価、価格査定を難しくさせている壁ということが出来るのです。

政府の示している中古住宅の評価の方向性

 

とはいえ、実際には住宅本来の機能という見地から評価できる戸建ての「中古住宅」を価値ゼロとしてしまうのではよろしくない、もっと戸建ての中古住宅を流通、活性化させようというスタンスが、近ごろの政府の姿勢です。

国土交通省では「中古住宅に係る建物評価手法の改善のあり方検討委員会」を設置、

平成26年3月には「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を示しております。

指針策定の目的としては、中古戸建て住宅の流通時における建物の評価について、人が居住するという住宅本来の機能に着目した価値=「使用価値」に係る評価のあり方を提言することとしています。

で、築20年~25年で木造戸建て中古住宅の市場価値がゼロと評価されることを否定

「使用価値」で評価するべし、ということを基本的な方向性としています。

その方法論としては、住宅を構成する部位を分類し、それぞれの部位における耐用年数に基づいて住宅の価値を評価するべきだと。

つまり住宅まるごとを一括の経年で考えるのではなく、部位ごとに評価していけば一律価値がゼロになることはないという考え方です。

でもって、住宅というのは「基礎」と「躯体」が肝心かなめなのだから、その基礎と躯体さえ機能が失われてさえいなければ、適切な内外装、設備の補修等を行えば、その住宅の使用価値は何度でも回復・向上するということを原則とするべきだとしています。

要は、リフォーム、リノベーションを施すことによって中古住宅の価値は保たれる、グンと増大することだってある、という中古住宅の市場づくりを目指そう、と。

で、これを実現するためには「適切なインスペクション」が重要なのだと。

もちろん、不動産業者もこの指針に則って今後しっかり取り組むように。以上!

と、まあこんな感じのことが示されているのでした。

このことに関する考察はまた別記事で。