A氏は、自己所有していたアパートをB氏に売却し所有権移転登記を行いました。
そのアパートに住んでいた賃借人C氏は、A氏と賃貸借契約を交わしていました。
やがてC氏はアパートを退去することとなり、それに際してA氏に対して敷金を返すように請求しました。
C氏は、A氏がB氏にアパートを売却することに関し賃借人である自分の承諾を得ていないのだから、A氏とC氏の間で賃貸借契約が結ばれている以上、A氏がC氏に敷金を返済するべきだと主張しています。
賃貸人が交替するとき、賃借人の承諾は不要
賃貸借契約期間中に賃貸人が交替する場合、賃貸人は賃借人に対して承諾を得る必要はありません。
よってC氏の「自分の承諾を得ていないのだから」という主張は通りません。
ただ、賃借人の立場からするといつの間にか大家さんが替わっているというのは、あまり気持ちの良いものではないともいえますし、賃料の振込先の変更等の告知の必要がある場合も多いので、それらに合わせなるべく早めにご挨拶文と共に一報を入れておく方がスムーズと思われます。
賃貸人が交替するとき、敷金返済債務は承継される
賃貸借契約期間中に賃貸人が交替する場合、敷金返済債務は、敷金が存在する限度において当然に新賃貸人に承継されます。
つまりA氏がアパートを所有していた時期に、A氏とC氏が賃貸借契約を締結し、A氏がC氏から敷金を受領していたとしても、C氏が退去するのが既にB氏所有の時期であれば、敷金の返済はB氏が行うことになるのです。