Aさんは自らが所有するアパートの貸主で、その1室に居住するB氏と契約期間2年間の建物賃貸借契約を結んでいたました。
しかし、ある「正当な事由」があるため、AさんはB氏との賃貸借契約の期間満了の際、更新せずに終了させたいと考えていました。
ところが、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、契約を更新しない旨の通知を出し忘れてしまいました。
気づいたのは期間満了の3か月前。
Aさんはその時点で慌てて、B氏に更新拒絶の通知を出しました。
やがて期間満了の時を迎えました。
しかしながら、B氏は居住し続けています。
家賃は支払ってくれているものの、一向に出て行ってくれようとはしません。
もちろん契約の更新をしたつもりはありません。
つまり契約していないB氏が勝手に住み続けている、とAさんは考えます。
AさんはB氏に退去して貰うことが出来るでしょうか?
期間の定めのある建物賃貸借契約における更新拒絶と法定更新
期間の定めのある建物賃貸借契約で、賃貸人が期間満了で契約を終了したい場合には、まず「正当な事由」が必要です。
その上で、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、更新しない旨の通知を出さなければなりません。
この期間に更新拒絶の通知が出されなければ、その契約は期間満了によって終了せず更新したとみなされます(法定更新)。
また、更新拒絶通知が適正に行われ期間満了で契約が終了した場合でも、期間満了後に賃借人がそのまま使用しているときは、遅滞なく異議を述べないと賃貸借契約は更新されたものとみなされる(法定更新となる)ので注意が必要です。
法定更新後の契約は、「期間の定めのない」賃貸借契約
期間の定めのある建物賃貸借契約が法定更新された場合、その更新後の契約は、期間の定めのない賃貸借契約となります。
ただし、賃料などの条件は更新前の条件と同じものとされます。
期間の定めのない建物賃貸借契約の賃貸人からの解約
期間の定めのない建物賃貸借契約を賃貸人から解約するためには「正当な事由」が必要です。
その上で解約の申し入れをすることになり、賃貸借契約はその申し入れの日から6ヶ月が経過すると終了することになります。
よって、Aさんは契約期間2年間の期間の定めのある賃貸借契約の期間満了時には、いくら「正当な事由」があっても、更新拒絶を適正な機関に通知しなかったために、契約を終了させることができず、法定更新を受け入れざるを得ないということになります。
そして更新後、期間の定めのない賃貸借契約として改めて解約の申し入れを行うという形式を取ることになります。