不動産の賃貸契約の連帯保証人は借金の連帯保証人より責任は軽いか?

連帯保証人




お部屋などを借りる際、家賃保証会社(賃貸保証会社)を利用する場合を除けば99%は連帯保証人を必要とします。

しかし、人の借金の連帯保証人になることの意味を理解している人は多くても、お部屋の賃貸借契約において、実際にはどのような責任を負うことになるかということに関しては、連帯保証人を依頼する側も引き受ける側も、あまり実感がないように見受けられることが多いです。

ここでは、建物賃貸借契約における連帯保証人について整理してみたいと思います。



借金の連帯保証人じゃないから大丈夫?

 

「連帯保証人といっても、別に借金の連帯保証人じゃないから。毎月の家賃さえきちんと払っていれば何の問題もないよ」

連帯保証人を依頼する側、引き受ける側両者がそんな言葉を口にするのをよく聞きます。

確かにそう言うこともできます。

実際に多くの場合は何ら問題なくトラブルとなることもなく賃貸借契約が終わることの方が圧倒的に多いのも事実です。

ただ「まさかの時」のことも事前によく知った上で、連帯保証人を依頼する側も、引き受ける側も契約に臨むべきだと思います。

少なくとも「借金の連帯保証人じゃないから大丈夫」という認識の方は、非常に危ういと言わざるを得ません。

以下をよく読んで認識を新たにして頂ければと思います。

連帯保証人に認められていない権利

 

「連帯保証人」と通常の「保証人」は違います。

通常の「保証人」には認められていても、「連帯保証人」には認められない権利というものがあります。

連帯保証人には「催告の抗弁権」がない

借主が家賃を滞納しています。

貸主が連帯保証人に滞納している家賃の支払いを求めます。

連帯保証人「何だよ、本人に請求しろよ!」

連帯保証人には「催告の抗弁権」がないということは、これができないということです。

通常の保証人であれば、まず主たる債務者(借主)、つまり借りている張本人に催告すべきということを債権者(貸主)に請求することができます。

これを「催告の抗弁権」といいます。

しかし、連帯保証人にはこの権利はありません

簡単にいえば、連帯保証人が部屋を借りている本人と同じ立場ということです。

決して自分が借りているわけではなくても、同じなのです。

滞納が発生してからたった1日めであったとしても、貸主は連帯保証人に支払い請求を行うことができるのです。

連帯保証人には、「検索の抗弁権」がない

借主が家賃を滞納しています。

貸主が連帯保証人に滞納している家賃の支払いを求めます。

でも、連帯保証人は実は借主は家賃の支払いを十分にできる給与所得者であることを知っています。

連帯保証人「こっちに請求する前に、彼の会社からの給与を差し押さえれば良いだろうよ!」

この言い分が通りません。

通常の保証人であれば、債務者(借主)に弁済の資力があり、かつ執行が容易であることを証明することにより、債務者の財産に対して執行せよと主張し、債権者(貸主)からの自分への請求を拒むことができます。

これを「検索の抗弁権」といいます。

しかし、連帯保証人にはこの権利がないのです。

連帯保証人には、「分別の利益」がない

また通常の保証人であれば、複数の保証人がいたとして保証人の頭数で均等割りした分を自分の責任として、その分だけを支払うことで保証人の責任を果たすことができますが、連帯保証人はそれができません。

当然、債務者(借主)との責任も分けられるということはありません。

「借りた本人と、連帯保証人のオレと両方に責任があるというなら、半分だけオレが支払ってやる。あとは知らんぞ!」

連帯保証人のこのような主張は認められません。

全額について保証債務を負うことになるのです。

賃貸借契約における連帯保証人の責任の範囲

 

ひとことでいうと、原則的に借主本人が負う責任をすべて負うことになるというのが、賃貸借契約における連帯保証人の責任の範囲です。

では、借主本人と同じ責任というと主に具体的にどんな責任かということになります。

滞納家賃の支払いと連帯保証人

滞納家賃について保証すること。

恐らくまっさきに想像つくところだと思います。

連帯保証人を引き受けた人の話を聞くと、家賃の2か月分くらいの請求が自分のところに来ることもあり得るが、それぐらいであれば何とかなるだろうと思い引き受けたという人が多いように思います

ただ先述したように、債権者(貸主)は債務者(借主本人)に資力があろうとも、1日滞納したのなら連帯保証人に支払いを求めることができることを理解しておくことが必要です。

原状回復義務と連帯保証人

原状回復義務とは、賃貸借契約が終了し部屋等を引き払う際に、その部屋等借りていたものを元の状態に戻して返す義務があるということです。

エアコン等の設備が壊れていれば修理して返す必要があるし、壁紙や床などが故意または過失により汚損している場合は張替や補修などを行って返す義務があるということです。

また賃貸借契約の特約等で通常の損耗の補修費用を借主が負担することになっていればその義務も含みます。

借主がこれらのことをせずに退去してしまった場合、連帯保証人が責任を負うことになります。

敷金や保証金を預け入れていてその範囲で原状回復がまかなえる場合は良いですが、それを超えるときは責任を免れ得ません

特に借主が部屋等をそのままの状態にしていなくなってしまった場合、ゴミや家財の保管や廃棄処分費用なども伴ってくるために、敷金や保証金内で収まらないことも多いと思われます。

善管注意義務と連帯保証人

借主には借りている部屋等に関し、善良な管理者と同様の注意義務をもって使用収益する義務があるとする、という「善管注意義務」があります

いわば部屋等を借りて使うにあたり、一般的、客観的に要求される程度の注意義務を常に払う必要があるということです。

その義務を果たさずに貸主や他の部屋の住人等に損害を与えた場合は、損害賠償責任を負うことになります

例えば水を出しっぱなしにして部屋に水を溢れさせ、それが下の階の部屋にも迷惑をかけるなどした場合です。

保険でカバーできる範囲であればまだ良いですが、そうではないケースもあります。

あまり考えたくないことかも知れませんが、借主本人が借りているその部屋の中で自殺した場合などです。

「借りた部屋の中で自殺しないようにする」というのは、一般的、客観的に要求される程度の注意義務すなわち善管注意義務にあたるわけです。

自殺者の出た部屋はその後なかなか入居者が決まらないか、入居する人がいてもおそらく家賃はかなり減額となるでしょうし、近隣の部屋の家賃減額につながる可能性もあります。

そしてそれら家賃収入が減った分はまるまる貸主の損害となるわけで、これらの回復の責任が連帯保証人に生じることとなり、その賠償費用はかなり高額なものとなります。

かなりレアケースの気がするかも知れませんが、賃貸物件を取り扱う不動産業者の担当者からすると賃貸物件での自殺や孤独死の場面に遭遇することは、そうそう稀な話ではありません

ちなみに孤独死、自然死に関しては「善管注意義務」に反してはいないと解釈されます。

ただし、室内で死亡したことにより部屋に汚損等をもたらしている場合、その回復義務は生じるといえます。

実際、賃貸借契約でいったん引き受けた連帯保証人はいつまで続くのか?

 

いざ連帯保証人に何らかの請求が及ぶと、賃貸借契約において連帯保証人を引き受けた時は、借主本人と親密な交流があったけれど、その後何年もの月日が経過するとともに付き合いもなくなり、連帯保証人になっていたことも忘れた、いや、覚えていてももう効力がないと考える人がいます

賃貸借契約の期間は居住用の部屋であれば2年から3年がほとんどです。

そして同じ部屋にその契約期間を超えてもなお居住したい場合は、定期借家契約でなければ原則的には契約更新がなされることになります

ただ契約更新がなされても連帯保証人に対して、引き続き連帯保証する意思があるかどうかを問い合わせることは、まずないでしょう。

少なくとも不動産業者や貸主がわざわざその意思を確認することはないと思います。

それでも、連帯保証人は更新された賃貸借契約においても原則的に連帯保証する義務があるとされます

平成9年に最高裁で下された判決においても、建物の賃貸借契約は期間の定めのある契約であっても、賃借人が希望すれば更新して賃貸借関係を更新するのが普通であるから、賃借人の連帯保証人も賃貸借契約の継続は当然予測できるものとして、更新後の連帯保証人の保証の義務を認めています

ですので、賃貸借契約は10年、20年に及ぶこともザラですから、冒頭のように昔の友人の賃貸借契約の連帯保証人としての義務を、云十年も後になって今果たせという事態も起こり得るのです。

賃貸借契約における連帯保証人に、なぜ親兄弟はじめ親族が求められるか?

 

とはいえ、何年も関係性のなかった連帯保証人に対して債権者(貸主)側は心情的にも物理的にも何がしかの請求はし辛いことも確かです。

仮に裁判となって勝つ見通しが立つとしても、その時間と労力を考えると戸惑いを覚えます。

一方で、借主の親兄弟であれば、仮に何年も音信不通の状態が続いても心情的なつながりは断ち切れないのが一般的です

親であればなおさらです。

法的にどうであったとしても、子供の不始末を処理したいというのが親の心情ではないでしょうか。まあ、もちろん例外はあるにしても、です。

そこで、賃貸借契約において連帯保証人は親をはじめとした親族でしっかりとした収入のある人物が求められることが多いのです。

よく耳にするケースで、自分の親よりも何倍も年収がある人を連帯保証人としたかったのだが、自分の親を連帯保証人にしてくれと言われた、というケースがありますが、考え方として借主本人との繋がりの強さをベースにしていると思われます。

いずれにしても、連帯保証人を依頼する人、引き受ける側、双方ともその行為を軽く考えずに慎重になるべきです。

社会の仕組み上、連帯保証人制度の良し悪しの議論はあるにせよ、現代の日本社会で生活している以上、連帯保証人をお願いする側になることも、引き受ける側になることも日常的にあり得ます。

どちらの立場であっても、その行為自体が決して悪いということではありません

ただ、お願いするにしても、引き受けるにしても賃貸借契約の連帯保証人になることが将来どのような責任を負うことになる可能性があるかきちんと理解しておく必要はあります。

そしてきちんと理解していたならば、

「毎月の家賃払っていれば問題ないでしょう。借金するわけじゃないし」

と軽くは考えずに、

お願いすることの重大さをよく自覚した上で礼節をもってお願いし、決して迷惑をかけないように相手に対しても、また自分自身に対しても誓うという心がけになると思うのです。