賃貸物件を借りる際、ほとんどの物件では契約時に賃料以外のお金が必要です。
ここでは入居時に必要な主だった費用とその内容について整理してみます。
どんな名目の費用が必要かは物件ごとに微妙に異なるので、物件を検討時によく見比べるとよいと思います。
目次
敷金または保証金
通常は、二つのうちどちらかの名目で設定されていることがほとんどです。
敷金と保証金の両方がかかる居住用のお部屋は、かなり稀です。
いずれにしても、これらは貸主に預け入れておく費用です。
何のために預け入れておくかといえば、「何か」あったときのため。
例えば、借主がきちんと正規の手続きを踏まずに、部屋をそのままにして出て行ってしまたとき。
貸主つまり大家さんは部屋の片づけ、クリーニングなどの費用を負担せざるを得ず、大きな損害を被る可能性があります。
そのリスクを軽減するために「敷金」や「保証金」を預かる場合が多いのです。
「1か月」とか「2か月」と書いてあるのは、「賃料」の1か月分、2か月分という意味です。
そしてこれはあくまで「賃料の・・・」であるので、「管理費分」は入りません。
賃料10万円、管理費1万円のお部屋の賃料1か月分は、「10万円」ということです。
でも、お部屋に住み始めたら、賃料と管理費の合算なので、毎月支払う費用は「11万円」ということですね。
ちなみにこれらは支払う際に消費税はかかりません。
これは借主が退去する際に返金される性質の費用です。
ただし必ず全額返金されるかというと、そうとも限りません。
詳しくは別の記事で書きますのでそちらをご覧ください。
「敷引き」「保証金償却」とは、どういう意味か?
敷金や保証金の欄を見ていると「敷引き」「保証金償却」という言葉を目にすることがあります。
大抵はその後に「20%」とか「1か月分」と書かれています。
敷金や保証金は本来、借主が普通に居住して退去するのであれば全額全額返金されるべき預け入れているお金です。
しかし、「敷引き」や「保証金償却」が設定されていると話は変わります。
ひとことで言うと、何ごともなく、お部屋もきれいなままで退去する場合でも、「一律この設定されている金額が、預けている金額から差し引かれますよ」ということを意味しています。
大家さんとしては、どんなにきれいに借主が居住し退去したとしても、次の入居者に引き渡すためにはある程度費用を掛けて手入れをしなければならないので、「その分を一定程度必ず負担してもらいますよ」と、契約する前に宣言しているようなものですね。
預けている敷金が20万円で、「敷引き20%」であれば、退去時に黙っていても4万円差し引かれるということです。
礼金
首都圏であり関東地方に特有な「慣習」といえるかも知れない費用です。
貸主に対する謝礼金?権利金?
正直なところ、その根拠があまり明瞭でない費用ですが、貸主側に立ってみると、空き部屋に入居者に入って貰うためには結構な諸費用がかかるのも事実です。
それを補うためというような意味合いもあるようです。
契約の自由から「礼金を払うのがイヤなら、この部屋を借りてくれなくて良いよ」という貸主側のスタンスの一方で、昨今、法的有効性が議論となることもあります。
そんなことが背景にあったり、賃貸業にも競争の原理が働いているということもあり、最近では「礼金ゼロ」の物件が多く見受けられるようになってきました。
それらの微妙な部分は別の機会にお話しするとして、礼金は、敷金同様「1か月」「2か月」と記載されていることが多いです。
ですがこれは敷金のようには退去時には返金されません。
また居住用の賃貸借契約の礼金には消費税はかかりません。
仲介手数料
これは仲介してくれた不動産業者に支払う費用です。
賃料の0.5か月分~1か月分+消費税の場合がほとんどといえます。
中には「仲介手数料ゼロ円」を売りにしている不動産業者もいます。
火災保険
賃貸借契約は、例外なくといって良いほど「退去時の原状回復義務」が謳われます。
火災保険は、火災などに遭ったときに自分の家財道具、部屋の原状回復の義務を果たすためにも、加入すべきですし、契約上それが条件となる場合が多いです。
前家賃
入居して最初の家賃を契約時に前払いする必要があります。
管理費や共益費の設定がある場合は、これも一緒に払います。
入居日がその月の1日(ついたち)であれば、ちょうど1か月分ということになります。
なるべくなら「きりの良い日」ということで1日に入居する契約が比較的には多いのですが、引越しの都合上そういうわけには行かないというケースもやはり多いわけです。
その場合は「日割り計算」で、入居初月の家賃を前払いすることになります。
ただ、その月の中旬以降の入居の場合は、入居初月とその翌月の家賃を一緒に前払いすることを求められることがあります。
たとえば、6月22日に入居の場合、
- 6月分→9日分(日割り計算)
- 7月分(1か月分)
この二つを契約時に前家賃として支払うということです。
まあ、家賃ですからいずれ支払わなければならないのですが、これを契約時に他の費用と一緒に支払うとなると、資金繰り的に苦しくなることもあるので注意が必要です。
家賃保証会社に対する保証料
「保険会社」ではなく、「保証会社」です。
たまに火災保険と混同している人もいますが、まったく別物ですね。
昨今増えています。
連帯保証人不要の物件には家賃保証会社との保証契約が必須なものがほとんどです。
また、連帯保証人を立てた上で保証契約が必要なケース、貸主から連帯保証人を求められなくても保証会社から連帯保証人を求められるケースもあります。
借主が家賃等を滞納した場合に、「家賃保証会社」が借主の代わりに貸主に速やかに滞納している家賃を支払い、家賃保証会社が借主に対してその分の建て替えた家賃代を請求、取り立てをするという仕組みです。
指定されて利用する保証会社によって異なりますが、1か月分の家賃と同額(100%)~20%くらいまでの「保証料」を賃貸借契約時に支払うことになります。
その他一時金
入居する際に必要な費用の基本構成は、「敷金」または「保証金」、「礼金」、「火災保険」、「仲介手数料」、入居初月の「前家賃」で、賃貸保証を利用する場合は加えて「保証料」が必要となります。
ですが、さらにこまごまとその他の費用が必要となることがあります。
ネット上に出てくる物件情報詳細にきちんと記載されているものはチェックし、他に書かれていないものがないかは、後に不動産業者に確認する必要があります。
頻出な費用としては以下となります。
鍵交換費
これは実際に前の入居者がスペアキーを持っているかもしれないという懸念から、新しく入居する人のために鍵を交換してくれるということですが、正直なところ本当に交換しているか怪しい物件があることも事実です。
いろいろ思うところがありますがどうでしょうか、妥協できるギリギリの線という感じでしょうか。
しかし、さらに「?」マークが点灯するような費用を必要とする物件もあります。
抗菌処理費用
それって、前の入居者の「クリーニング費用」で徴収してない?
事務手数料
「仲介手数料」に含まれるものではありませんか?
町会費
強制?回覧板も回ってくるの?
ゴミ置き場対策費
・・・・
ネット上(募集広告上)できちんと記載されているものは、まだ事前に正直に言う分マシだと考えられます。
しかしながら、後になって請求されるケースもあるので、念入りに事前確認する必要があります。あまりに納得できない諸費用が計上されている物件は、貸主においてか、管理している不動産業者においてか、その姿勢に違和感を感じ、早々に諦める(選択しない)ということも大事です。
特に何か特殊、特別な事務手続きのない賃貸借契約の仲介業者が仲介手数料の他に事務手数料を徴収する行為は宅建業法に違反する行為です。
支払いを拒否、交渉する等いくつかアクションの選択肢がありますが、率直なところ、ちょっと調べれば違反と分かるような行為を堂々とやっているような業者と関わってもあまり良い結果に至らないと判断するのが良いかもしれません。