「居抜き物件」で失敗しないための心得を知っていますか?

居抜き店舗




店舗として物件を借りる際、「居抜き物件がお得!」という考え方が最近かなり浸透しているように思います。

「居抜き物件」とは、前テナントの内装(造作)や機器類、備品等が残っている状態の物件です。

独立開業しようとする方の物件探しの相談に乗ると、半分以上の人が「出来れば居抜き物件」と口にします。

少しでも内装費、設備費を浮かせたい。

その想いからでしょう。よく分かります。

何もない状態、すなわちスケルトン状態から内装して行くことを考えれば、相当にコストは抑えられそうな気がしますし、実際にそのようになるケースも少なくありません。

しかし、実はそんな居抜き物件。

意外と「こんなはずではなかった」と後悔のタネやトラブルになることが多いのも実情です。

ここでは、店舗の「居抜き物件」の契約の基本として、「居抜き物件」の考え方、契約の進め方の基本を整理します。

 



「居抜き物件」の造作譲渡費用設定の有無の確認

 

まず居抜きの物件情報を見てまず確認すべきことがあります。

それは「造作譲渡費用」の有無です。

居抜き物件とは、前テナントの内装・設備がそのままの物件。

と理解している人が多いのですが、それは間違いではありません。

ただ、それが決してタダとは限らないということです。

これを理解していない人は意外にも多いように感じます。

 

「価値あるものには値段がつく」

「無価値なものはタダ」

 

およそこれが世の中でしょう。

居抜き物件に当てはめて考えると、立地や階数、造作・機器類の状態などを鑑み、一般的にも「これは使える」と大方の人が思うような居抜き物件には、だいたい「造作譲渡費用」といって、その物件の内装や設備を譲り受ける費用の設定がされています

一方、その「造作譲渡費用」の設定がまったくない居抜き物件は、逆に立地が悪い、造作、設備の使い勝手が悪そう、古いなど、大方の人が「これは使えない」と思うような状態である傾向があります。

前の借主は、その物件で商売を営んでいました。

何らかの事情でそこを退去することになりました。

その際、自分の所有物で不要な物に関して、どう考えるでしょうか?

「金目の物」は1円でも現金にしたい、と考えるのが一般的だと思います。

仮に無償で人に譲るとしたらどうでしょうか?

アカの他人ではなく、友人、知人、世話になった人に譲りたいと思うのが人情ではないでしょうか?

一方で、退去に際してはお金も掛かります。

まずは不要な物の廃棄する費用。

引っ越し費用。

借りていた物件の原状回復費用。

出ていく費用は1円でも抑えたい

これが退去する人の心理です。

そしてこのような退去する人の心理、退去するに至った事情、状況と、

貸主の事情、状況、思惑、

介在する不動産業者の思惑の中で、

居抜き物件の造作譲渡費用は設定されて行くわけです。

そして「居抜き物件を契約する」ということは、そうした人々の思惑と、あなた自身の思惑とを秤にかけ、建物賃貸借契約と共に、造作譲渡契約書を結んで前借主の造作を買い受けるということなのです

 

造作譲渡項目書(リスト)で内容を確認させてもらう

 

最初の情報上では、造作譲渡の内容がきちんと示されないのが一般的なような気がします。

ですので、物件探しをしている際その金額は記載されているのと同様ざっくり理解しておけば良いと思います。

その物件を気に入り賃借に前向きになっているわけでもない、ましてやまだ物件を見てもいない段階で、不動産業者に造作譲渡の内訳を問い詰めても、良いか悪いかは別にしておよそ適当にあしらわれることが多いと思います。

しかし、物件を内覧しその物件が候補となった段階では、必ず行うべきことがあります。

不動産業者に造作譲渡項目書(リスト)の作成、つまり造作譲渡の内容を明らかにしてもらうということです。

何だ、当たり前じゃないかと思うかも知れませんが、意外とこの作業、きちんとやっておかなかったがために後々お困りのケースになることが多いのです。

 

造作譲渡項目書(リスト)を作成しないお困りケース

 

よくあるお困りのケースはこんな感じです。

例えば飲食店の居抜き物件。造作譲渡費用300万円の物件の内覧。

自分がやろうと思っている業態はワインバー。前テナントはショットバー。

カウンターメインの内装はばっちり。厨房も少し小さめだが一通り揃っている。あとはワインセラーを買い足せば良いくらい。

少し内装をいじればすぐにオープンできそうです。

ただ問題はその造作譲渡の価格。高い。

現地で不動産業者担当者に造作譲渡の内容と価格を交渉。担当者は、前借主は一式そのまま置いて行くと言っていましたよ、と。

価格に関してはどれくらいが希望か尋ねられたので、200万円ならナントカと答えました。

後日不動産業者より連絡あり。

即決で賃貸借契約を結べるのならば造作譲渡費用200万円でOKと。

そしてめでたく契約。その際、造作譲渡契約書にも署名、押印。

しかし、実際引き渡しを受けてみると、店内の内装はそのままであるが、カウンターの椅子、コールドケースをはじめ、あると思い込んでいた物がない

唯一残っていた厨房機器は製氷機であったが、故障していて修理が必要

不動産業者担当者に問い合わせるも、「造作とは内装として建物に施した造作物のことで、前テナントが所有していた厨房機器や備品類は含まれない」と一点張り。

結局、足りない厨房機器は購入、製氷機も自腹で修理しました。

 

お困りのケース、ポイントは2点あります。

造作譲渡の範囲をきちんと確認していない点と、厨房機器が故障している状態か否かの確認です。

この作業は本来であれば不動産業者としては前借主と詰めて明確にしつつ、新借主にきちんと提示するのが正当なのですが、怠ってやらない業者や諸事情により避けている業者がいるのも実情です。

不動産業者が、黙っていても造作譲渡項目書(リスト)をきちんと示して検討させてくれる業者であれば、それを元にチェックすれば良いですが、もし対応してくれないような業者であれば、自分で内覧時にリストを作成、それを元に一つ一つ譲り受けられるかどうか確認し書面に残していくという作業をすると良いと思います。

また造作譲渡項目書(リスト)を不動産業者が用意してくれたとしても、過不足がある、壊れているか否かの確認がなされていないなど不十分なことは多いといえます。

そういう意味でも、照らし合わせるためにも、自分自身でもきちんとメモをしておくと良いと思います。

特に自分が欲しいと思っている物は必須です。

「あったはずなのに、ない!」

本当によくあります。

その後、前借主がリサイクル屋に売り払った、知り合いに欲しいと言われたからあげた、理由は様々なのです。

 

造作譲渡契約書と造作譲渡項目書(リスト)はセット

 

居抜き物件における造作譲渡。

最終的には必ず建物賃貸借契約書とは別に造作譲渡契約書という書面をもって契約を締結します

その際、体裁は様々ですが造作譲渡項目書(リスト)とセットになっていることが望ましいです。

そして契約では必ず「譲渡期日」と「賃貸人の承認」を明らかにする必要があります

譲渡期日は、これをはっきりしていないと極端な話何か月先まで引き渡されないといった事態につながりかねません。

また、造作譲渡契約そのものに貸主の承認が必要であると理解しておくと良いと思います。

おそらく建物賃貸借契約上には、内装、造作に関しては賃主の承諾を得るということ云々という条項があるはずです。

つまり、譲渡を無断で行うと貸主の承諾を得ていない造作、と捉えられかねない状態になる可能性を残します。

とはいえ、通常は「居抜き物件・造作譲渡費用○○万円」という形で募集がなされている物件に関してはその点はクリアできていると考えて良いとは思います。

居抜き物件はお得とは一概には言えないということ、造作譲渡契約は必ず造作譲渡項目書(リスト)を作成し、譲渡されるものを明らかにするということを中心に居抜き物件の契約を考えることが基本となります。