Aさんは、約1年前に今のアパートに入居しました。
不動産業者の仲介でB氏という大家(貸主)と、契約期間は2年間、更新も可能、賃料は月額9万円と定めた建物賃貸借契約を締結し入居したのです。
ところが2か月ほど前にC氏という人物から、アパートとその土地をB氏がC氏に売却したということを聞かされました。
そしてC氏は、アパートを解体してその土地を別の用途で使いたいので、Aさんになるべく早く退去して貰いたいと依頼してきました。
Aさんとしては、契約期間中であるし契約終了後も更新してなるべく長く住みたいと考えているので、退去してくれと言われても俄かには応じられないと回答しました。
するとC氏は、
「Aさんが契約したのはあくまでもB氏とであって、自分との間には建物賃貸借契約は交わされていない。
しかも、Aさんが住んでいる部屋の賃借権に関して登記されているわけでもないので、Aさんの入居者としての権利は、自分との間にはないといえる」
と主張してきました。
Aさんは、アパートを退去しないといけないのでしょうか?
建物の賃借権を第三者に主張できる場合
建物賃借権は、賃借権が登記されている場合、また建物の引渡しのどちらかがなされていれば第三者に主張することができます。
Aさんは、B氏との間に建物賃貸借契約を結び、鍵を渡されそこに居住しているということは、「建物の引渡し」を受けているということになります。
ですので、B氏からC氏にアパートの所有者が替わり、C氏との間に賃貸借契約を交わしていなくても、また賃借権の登記がなされていなくても、AさんはC氏に対して賃借権を主張することができるのです。
つまりAさんはB氏と締結した賃貸借契約に基づき、そのままその部屋に居住し続けることができます。
そして契約が終了するに際し、その契約が更新できるかという問題になりますが、原則的には更新可能です。
ただC氏側に更新しない正当な事情がある場合、それが「正当」と認められるものであり、定められた手続きがなされた時は、更新できないこともあり得ます。